古くて新しい「おサイフケータイ」で、電子マネーは文化になるか

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こんにちは。
イードア広報担当です。

 

新型iPhone7は、私たちの財布になる。それは古くて新しい決済機能でした。

 

「決済を考える人々はビジネスモデルを組み立てるところにフォーカスする。しかし我々はユーザー体験にフォーカスした」

 

2016年9月8日、アップルのティム・クックCEOが発表した新製品の数々。中でも日本のユーザーにとって、一際目を引いた機能の一つは「Apple Pay」の導入でしょう。

 

「Apple Pay」は、ユーザーが自身のクレジットカードをiPhoneで撮影、指紋認証することで、対応するNFCリーダーさえあれば街中で、もしくはオンラインの買い物で、iPhone一つで支払いが済むようになるサービスです。2014年10月にいち早く米国でスタートしたこのサービスは、現在、欧州やシンガポールなど複数ヵ国で利用することができます。

 

いわゆる「非接触通信」の国際標準規格であるNFC(Near Field Communication)を活用した、この新しいユーザー体験がもたらしたものは、日常の決済における「簡単」と「安心」でした。

 

一方の日本では、2004年にNTTドコモが「おサイフケータイ」をスタートさせていました。時代を10年先取っていたともいわれるこのサービスは、海外でもビジネスの成功事例として評価されています。使用されている日本独自のNFC規格「FeliCa」は、JR.東日本の「Suica」に利用された技術であり、スピーディな交通決済というユーザーのニーズを満たす形で、一気に私たちの生活インフラとして浸透していきました。

 

これにより、駅周辺の小売店などを中心に、電子マネー用の決済端末が一般的に設置されるようになったにもかかわらず、現状日本のキャッシュレス化は一向に進んでいません。

 

日本クレジット協会の15年版統計によると、日本における民間最終消費支出に占めるクレジット、デビット、電子マネー合計の比率は僅か17%だそうです。これは韓国の85%、シンガポールの56%、米国ではクレジット、デビット合計で40%以上という現状と、あまりにもかけ離れているといえます。

 

地球の裏側アフリカでも、着々とキャッシュレス化が進んでいる

 

日本よりもあとから電子マネーという概念が浸透したにもかかわらず、海外でそれほど急速にキャッシュレス化が進んだ背景はどこにあるのでしょうか。

 

例えば、日本よりもはるかに電子マネーが普及している国の一つに、ケニアがあげられます。

同国で一般的になっている「エムペサ(M-PESA)」は、携帯電話のショートメッセージ(SMS)を送るだけで、簡単にお金のやり取りができるというモバイル決済サービスです。2007年に登場して以来、現在ユーザー数は人口のおよそ3分の1以上にあたる1700万人にも上ります。

 

「エムペサ」普及の要因は、ケニアの社会的背景にありました。

開発途上国ではしばしばそうであるように、ケニアの若い労働者は都市部などに出稼ぎに行き、故郷に残る親族に生活費を送金します。しかし、ただでさえ都市部に集中する銀行の支店が地方部に十分であることはなく、かつ貧しい住民が口座を持つことは難しい状況です。また、本人が直接の手渡しを試みるも、強盗に襲撃される危険性がありました。

 

このような社会的不安を解消するイノベーション、新しい金融サービスとして生まれたのが「エムペサ」だったのです。同国では、2000年代から急速に携帯電話加入者が増加していたことも、追い風となりました。

 


このように、決済という生活に深く結びついたサービスにおいて、その普及の鍵を握るのは、純粋に提供される価値の善し悪し以上に、社会的なニーズやインフラ・行動慣習など、生活の背景にある要素が重要なのかもしれません。

 

キャッシュレス後進国である日本を「Apple Pay」が変えうるのか、非常に楽しみである一方、iPhoneが「おサイフケータイ」という日本特有の機能を搭載することで、「普遍的な魅力をもつこと」が魅力である商品を生み出してきたアップルの信念に反しはしないのか、気になるところです。

 

 

 

※参考

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2016-08-31/OCNE6A6JIJUO01

http://toyokeizai.net/articles/-/47779

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