「民泊」というイノベーションを法律が追いかける
こんにちは。
イードア広報担当です。
革新的であると同時に、様々な社会問題を生み出している「民泊」。2020年の東京オリンピックを見据え、法整備と規制緩和に向けて国が本格的に動き出しています。
訪日観光客の増加という社会的ニーズに応える「特区民泊」の存在
2016年9月9日、政府は旅行業法の特例として認められていた「特区民泊」の最低宿泊・利用日数を、従来の「6泊7日以上」から「2泊3日以上」に規制緩和することを正式に発表しました。
米国のスタートアップAirbnb(エアビーアンドビー)の功績により、次第に一般に浸透しつつある民泊ですが、本来、日本では、旅館業法に基づき国から許可を得ることなく宿を貸し出すことは禁じられています。アプリ上で貸し主と借り主の手軽なマッチングを生む同社のサービスは、従来の法規制ではカバーできませんでした。
民泊は様々な不正の温床となる恐れもあるため、国や自治体によって一定の監視下に置かれる必要があります。一方で、訪日観光客の増加による宿泊施設の不足という現実的問題に対処するため、新しい仕組みを有効に活用することが急務でした。
そこで2016年から導入されたのが、いわゆる「特区民泊」です。
これは国家戦略特区として指定を受け、かつ民泊条例を制定した地方自治体の管轄内においては、民泊に関する規制を緩和するものです。2016年9月10日時点、この条件を満たす地方自治体は全国でも東京都大田区と大阪府(大阪市を除く)しかありません。(羽田空港の近隣/観光地と、どちらもインバウンド需要を抱えています)
新しい不動産投資のあり方、場合によっては収益性で通常の賃貸を上回る
日本ではまだまだマイナス面が注目されがちな民泊ですが、インバウンド対策以外にもいくつか良い面があります。
一つは、それ自体が比較的安定した不動産運用商品であるということです。例えば、新宿区で2~3人が利用可能な部屋(1K中心)を貸し出す場合、一ヶ月の一般的な賃貸収入は9万円程度といわれますが、同じ物件を一ヶ月民泊用に解放した場合、平均収入は約34万円にもなるそうです。
このような収入は、空き部屋をもてあます高齢者にとって、大きな収入源になり得ます。実際、Airbnb共同創業者のネイサン・ブレチャージク氏も、日本の高齢者市場に大きな期待を寄せていると発言しました。
ほかにも、相続税対策としての民泊という一面もあります。不動産は現預金を直接相続するよりも、節税対策として有利であるからです。
気軽に宿泊できる便利さの弊害
一方、そこに様々な問題点が付随してくることは想像に難くありません。
例えば、貸す側・借りる側双方に合意が成立していたとしても、近隣住民やマンションの管理組合など周辺関係者の反対の声は無視できません。騒音や事故など、予測のつかないリスクが大きいためです。
不動産企業にとっては、どうでしょうか。
現在都内のアパート空室率は約3割といわれるなか、入居率担保のため、アパート開発を行っている企業も、ビジネスチャンスとして注目しているはずです。さらに、都心の観光地だけでなく、田舎の古民家に誘致する計画もあります。
しかし、現状ではあまりにも法律的にグレーな部分が多く、事業計画を実行にまで移している企業は多くはありません。許可無く民泊事業を展開していた個人/企業の役員らが書類送検された事例も、多数発生しています。
政府によると、2016年末までには「民泊新法」が制定されるそうです。まだまだグレーゾーンが多いなか、現状を打破するものであることが期待されます。また、それにより不動産業界各社が本格的にビジネスに乗り出せば、一気に民泊の波は加速していくかもしれません。
Airbnbという一つのスタートアップから生まれたこの一連の動きは、社会に新しい恩恵をもたらす一方で、非常に複雑な問題も生み出しています。スタートアップが創出するイノベーションは、それ自体が社会に対する強烈な問題提起であるということを象徴している事例といえるでしょう。
新たな規制が適切なものかどうか、私たちも注視していく必要がありそうです。
※参考
http://style.nikkei.com/article/DGXMZO06927550W6A900C1PPE001?channel=DF280120166591
https://minpaku.yokozeki.net/about-minpaku/#i-3
http://airstair.jp/2days/