水と都市が共生する東京を考える

img_3557

こんにちは。
イードア広報担当です。

 

東京の羽田、臨海、都心エリアを中心に、舟運復活に向けた社会実験が活発化しています。

 

2020年のオリンピック開催に向けて、東京都では新たな観光・交通手段としての舟運を確立するべく、民間事業者・市民を巻き込んだ社会実験が、平成28年度から始まりました。区間や料金設定、乗船環境など多方面からの検証を目的とする同実験は、これまで有料の実験参加者として延べ乗客数3500名以上を動員しています。

 

水上交通という東京の新しいインフラをめぐる夢と現実

 

現在、舟運は水上の公共交通手段としてだけでなく、観光名所としての魅力や周辺エリアへの経済効果も見込める有効なシステムとして期待されています。

 

例えば、野村不動産が手がける浜松町駅東口エリアの都市再開発計画にも、水上タクシーの構想が盛り込まれています。これまで、羽田空港へ向かうモノレール始発駅という役割を担ってきた浜松町駅ですが、都内では比較的控えめな印象のエリアでした。

 

このJR駅徒歩5分の広大な土地に、2棟のタワービルを建設するという同社のプロジェクトは、延べ床面積は計50万平方メートル、土地を含めた総事業費は3500億円規模になる見込みです。この開発地横の運河に船着き場を設けることで、リムジンボートや水上タクシーなど新たな交通インフラの要所として、エリア全体を活性化していく狙いがあります。舟運は渋滞のないスムーズな交通手段であり、羽田空港と浜松町間を10分程度で結ぶことができるのだそうです。

 

また、ここでの実用化を検討されているのが、水素で動き、水しか排出しない燃料電池船です。東京海洋大学などで開発が進むこの乗り物は、燃料となる水素と酸素を反応させて発電しモーターを動かす仕組みで、2016年10月東京湾にて初めて試験航行されました。従来の水上バスに使われる重油エンジンよりも静かで、環境に優しく、実用化に向けた研究が急ピッチで進められています。

 

一方で、検討すべき課題も少なくありません。波による揺れや天候など海上特有のリスクへの備えとして、安全面への配慮が最大限求められるほか、屋形船など既得権益との調整も必須です。都内の港湾や河川航行における、危険、迷惑行為を取り締まる目的の「都水上取締条例」も、1948年の施行以降で初めて改正されようとしています。今後、将来的な収益確保の仕組みづくりや、足の遅い船上ならでのおもてなし要素など、視点によって様々な魅力が引き出されていきそうです。

 

水上の目線から再設計される都市のアイデンティティ

 

水と都市の関係性は、意外に深いものがあります。

 

陸や空の交通輸送手段が発達する以前、海のネットワークをつなぐ港は、都市の中心にありました。港を中心に市場ができ、人の往来が増え、様々な施設が生まれていく。そのような都市のあり方が、港町の魅力を形成してきました。現在の東京の姿からなかなか想像はつきにくいですが、かつて江戸は「水の都」と呼ばれていた歴史があります。一方、同じ「港」でも空の玄関にあたる空港は、都市の外部にあります。その周辺から賑わいが生まれ、文化が生まれていくような機能は空港にはありません。

 

今回の舟運社会実験では、羽田-秋葉原間という航路が選ばれましたが、東京都心のビル街まっただ中、秋葉原の「万世橋」に備わる船着場は昭和5年につくられたものです。この歴史ある拠点が、90年近くあとになって活用されることになるとは、誰が想像し得たでしょうか。

 

高度経済成長期に進んだ水の汚染は、私たちの生活と水とを切り離しましたが、2020年という節目を目前に、水辺の風景、水と共にある都市のあり方が見直されつつあります。

 

舟運の定期運航が実現したとき、何より重要になるのは「船から見える景色」です。今後求められる都市のデザインを考える上で、水上から東京の姿を眺めてみることは、現代に失われた大切な視点を取り戻すことになるのかもしれません。

 


観光地としての東京のインフラに注目が集まるなか、最新のIT設備だけでなく、目に見える形で残るものと、残すべき空間を活かすという発想も生まれています。

 

このような社会実験をうまく活用し、実際に体感してもらうことで、トップダウンではなくボトムアップの発想から都市の価値が見直されていくことに期待したいですね。

 

 

 

※参考

http://mainichi.jp/articles/20161119/dde/041/040/036000c

http://www.mlit.go.jp/sogoseisaku/region/sogoseisaku_region_tk_000022.html

http://www.mizu.gr.jp/kikanshi/no08/index.html