「同一労働同一賃金」がもたらす日本型雇用の転換点

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こんにちは。

イードア広報担当です。

 

「同一労働同一賃金」という言葉から、皆さんはどのような働き方を連想しますか?

 

2016年12月20日、政府は「働き方改革」の核となる「同一労働同一賃金」の実現に向けたガイドライン案を公表しました。

 

この指針は、“同じ仕事内容であれば、同じ水準の賃金が支払われるべき”という考え方に基づいており、主な焦点は、正規社員と非正規社員間での“あいまいな差別”の禁止です。

 

実は、諸外国では当たり前に浸透しているこの概念ですが、日本ではこれまで雇用習慣の違いなどの要因から、あまり定着してきませんでした。それがなぜ、いま議論されているのでしょうか?

 

日本特有の雇用のあり方が通用しなくなってきた

 

これまで派遣や契約といった非正規社員は、正規社員と同じ業務、責任を担っていたとしても、基本給や各種手当、福利厚生など待遇面で不利な立場に立たされてきました。

 

厚生労働省などの調査では、日本の非正規社員の賃金水準は正規社員の6割程度ともいわれ、欧州の8~9割と比べ、明らかな待遇格差があります。

 

そもそも背景にあるのは、雇用に対する考え方の違いです。

 

欧米アジア諸国では、職務に応じて賃金が決まる、いわゆる「ジョブ型雇用」が一般的です。労働者の仕事内容・範囲は雇用契約の時点から明確に決まっており、定められた職務がなくなった場合には解雇の正当な理由になります。

 

採用も基本は欠員募集であるように、会社が定めた仕事に対し「人」をあてはめるという発想で、労働と賃金の関係性は非常にシンプルです。

 

一方で日本は、会社に所属し、その中での地位により賃金が決まる「メンバーシップ型雇用」といわれます。これにより会社内での配置転換や新卒一括採用など、日本特有の雇用慣習が発達しました。しかし、年功序列の給与体系は個々の能力と見合わないこともあるばかりか、右肩上がりの成長なしに維持することは困難です。

 

高度経済成長期から脱した日本では、働き方のニーズが多様化しつつあります。

 

今後は少子高齢化・労働力人口の減少により、フルタイムで働けない女性や高齢者など、非正規雇用者の数も増え続けることが見込まれ、非正規の待遇に関する社会問題が顕在化しつつあるのです。

 

問われる「同等」の定義

 

2016年8月、米国マサチューセッツ州で発令された「平等賃金制定法」は、性別を問わず同等の仕事には同一の賃金を支払うこと、という義務を課しています。

 

日本では雇用形態間の格差に焦点があたっていますが、米国では「同一労働同一賃金」といえば、男女間の賃金格差の問題を主に指します。これまでにもニューヨーク州や、カリフォルニア州で同様の州法が生まれており、この流れが他州へ及ぼす影響にも注目が集まっています。

 

しかし「同等の仕事」といっても、容易に定義できるものではありません。実際、各州の定義はさまざまです。

 

今後日本でもこのような考え方が普及し、法律で明文化されるに至った場合、企業に求められるのは、労働者の技能に対する新しい評価制度の構築です。個々の技能が生み出す価値と賃金体系との紐付きがいかに合理的であるか、説明責任は企業側が負うことになるからです。

 

説明を容易にするのは職務の明確な分割ですが、中小企業などにおいては、なかなか現実的ではありません。

 

一方、労働者側にとっても、正規社員だから、勤続年数が長いからといった理由で高い賃金をもらいつづけるのは困難になっていくことは明らかです。また、非正規社員の人数規模を考えると、正規社員の待遇にどう影響していくのかも分かりません。

 

日本が海外のような「ジョブ型雇用」にどこまで舵を切るか、賃金だけでなく、公的扶助なども含めた社会保障全体の再考が求められることになりそうです。

 


今回の指針案の発表に対し、人件費増加を懸念する企業は多いものの、一方では長期的視点での人手不足・人材流出といった予想される課題もあり、各企業は難しい対応を迫られています。

 

制度が定められたとしても、運用方法が不明確になってしまっては元も子もありません。これまで必ずしも明文化されてこなかった、各人の労働の価値に注目が集まっていきそうです。

 

 

 

※参考

https://www.hrreview.jp/mid-career/3378/

http://diamond.jp/articles/-/112527

http://www.works-i.com/column/works02/%E5%B0%8F%E5%8E%9F%E4%B9%85%E7%BE%8E/