スタートアップが都市の文化になるとき

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こんにちは。

イードア広報担当です。

 

先日、シリコンバレーには「brogrammer(ブログラマー)」と呼ばれるエンジニアがいるという話を初めて聞きました。

 

英語で親しみを込めた呼びかけを意味する「bro(brotherの略)」と「programmer」を掛け合わせたこの単語は、「開発者=技術オタク、ギーク」といった従来のイメージを覆す、男らしくたくましい体格・性質のエンジニアのことを意味するのだそうです。

 

英語版Wikipediaにも、「A brogrammer is a slang term for a macho, male programmer.」との記載があります。

 

※「macho(マッチョ)」という単語は、日本語では筋骨隆々な男性のイメージが強いですが、英語ではそれよりも人の性質や価値観を表わす言葉として使われることの方が多く、どちらかというと男性優位な考え方の男性を指すようです。

 

米国で人気のスタートアップ成長コメディドラマ『シリコンバレー』にも、そんなマッチョなキャラクターが登場しています。これは実際のシリコンバレーでも見られる光景で、Tシャツやパーカーがビジネスカジュアルとして通用するような文化がつくられた一因でもあるそうです。

 

スタートアップ文化の発信地としては世界No.1の都市であるシリコンバレー。しかしいま、世界中のさまざまな都市でスタートアップ文化が形成されつつあります。

 

スタートアップが成長しやすい都市、日本は圏外

 

米国StarupGenome社が作成した「Global Startup Ecosystem Report 2017」には、世界50ヵ国100都市のスタートアップエコシステム調査結果がまとめられています。(テック系スタートアップのみが調査対象)

 

スタートアップの急成長に必要となるのは、起業家のアイディアだけでなく、志をともにする仲間、資金面を支える投資家やVCなど、さまざまな要素があります。成功するスタートアップが集まる土地には、自然とこれら要素が集まり、さらに成長がしやすくなる。この好循環が、いわゆるスタートアップのエコシステム(生態系)と呼ばれるものです。

 

この調査の場合は、Performance(会社の業績)、Funding(資金調達)、Market Reach(市場への進出度)、Talent(人材)、Startup Experience(知識やネットワークの蓄積)という5つの指標が評価されており、トップ20は下記のようになっています。

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前回2015年のレポートと比較して順位を上げた都市は、“Brexit(EU離脱)”したイギリス・ロンドン(6位から3位へ)、にわかにランクインしてきた中国・北京と上海(4位と8位)、そしてドイツ・ベルリン(9位から7位へ)となっています。

 

ちなみにこのレポートでは、各都市の詳細な分析報告のほか、アーリーステージの平均資金調達額やエンジニアの平均給与といった数値データなど、興味深い情報も豊富にまとめられています。

 

では、気になる日本の順位は?残念ながら“Tokyo”の記載はありません。言語的問題から調査対象に含まれていないのか、そもそもランク外なのか、理由は不明ですが、世界的に見て日本のスタートアップエコシステムのプレゼンスが弱いことは事実であるといえるでしょう。

 

ドイツ・ベルリンに起業家が集まってくる理由

 

ベルリンは、ここ数年で最も急速に成長してきたスタートアップ集積地の一つです。

 

特に有名なスタートアップといえば、クリエイター向け音楽配信プラットフォームのSoundCloudや、2016年8800万ドルという大型資金調達をした食材・レシピ宅配サービスのHelloFresh、欧州内の交通手段の検索サービスGoEuroなどがあります。

 

なぜ、ベルリンという都市には有望なスタートアップが集まっているのか?それを語る上で外すことができないのが、まず歴史的背景です。

 

第二次世界大戦後に東西冷戦で分断されたこの都市は、「堅実」といったイメージのドイツの中でも、特殊な文化が根付いてきました。当時、東ドイツ内でも孤立した西ベルリンには産業が発達せず、安定した職を求める人々の流出が相次ぎました。その結果、国内でも失業率・貧困層の割合が高い都市となっていきます。

 

しかし、家賃や物価といった生活コスト全般が低くなったことで、アーティストや学生など、国内外のクリエイティブな若者が集まるようになりました。SoundCloudの2人の創業者も、スウェーデン・ストックホルム出身でありながら、コストの低さに惹かれてベルリンを拠点に選んだそうです。

 

また、ベルリンでは英語を話す人が多く、かつ外国人従業員がビザを取得しやすいという環境要因があります。これにより、多様なバックグラウンドをもつ人材を集めやすくなっており、スタートアップ企業の強みの一つとなってきました。

 

スタートアップをはじめる上で、起業コストが安いこと、優秀な人材が集めやすいことは非常に重要な条件です。ベルリンは独自の要因がうまく活かされ、都市の文化が形成された好例といえるでしょう。

 

おわりに

 

一過性の成功ではなく、循環する発展へ。近年、スタートアップのエコシステムという単語が注目されるようになった背景には、そのような環境要因が、スタートアップの成長において極めて重要であると考えられてきたことがあるでしょう。

 

どんなに秀逸なアイディアをもち、どんなに高尚なビジョンを描いていたとしても、小さなスタートアップが自分たちの力だけで成長していくことは簡単ではありません。

 

都市の強みを活かした、成長のための環境づくり。そして、シリコンバレーで成功したスタートアップ創業者が、次の新興企業に投資していくように、自分がもらった恩を次世代への支援という形で連鎖させていくという発想。これからの時代において、未来の都市を形成し、文化の発信地となるうえでは、そのような視点が大切になってくるのではないでしょうか。

 

企業に限る話ではありませんが、成長の背景には必ず感謝すべき存在がいて、その恩を社会に還元するという姿勢こそが、すべての出発点となるのではないかと思います。

 

 

 

※参考

http://gigazine.net/news/20170425-hbo-silicon-valley-nailed-real-tech-industry/

http://d1i53wesras4r4.cloudfront.net/GlobalStartupEcosystemReport2017.pdf

http://www.sbbit.jp/article/cont1/33435